本当は初回1000㎞位で分解整備した方が良いらしい*1のだが、シマノのホイール WH-RS100 を購入してから2000㎞も走ってしまった。
シマノのホイールは全てカップ&コーン式のベアリングを使用している。安い入門車に付いている無名ホイールの場合はシールドベアリングを使う場合が多く、メンテナンスフリーを謳う*2が、カップ&コーン式のベアリングは定期的なメンテナンスが必要である。
いい加減心配なので、重い腰を上げて整備に取り組んだ。
既にハブの分解整備の経験はあり、手順としてはさして難しい物でもないのだが、このところは外を走れなくてもローラー台を使ったり、これを弄ると手が油だけになり汚れ物が沢山出るので面倒くさく、ここまで引き伸ばしてしまった。
先ず必要な物を列挙すると
- ハブコーンレンチ13㎜と15㎜
- スパナ17㎜
- 6角レンチ10㎜
- ハブグリス
- パーツクリーナー
- トレイ類
- ウエス類
- ピンセット
- マイナスドライバー
あと、ハブ自体の分解には直接関係ないが
- スプロケリムーバー
- ウェットティッシュ
- 厚手の手袋
- 汚れ防止の新聞紙等
が必要となる。
※必要な道具はホイールによって違うが、WH-RS010でも同じ道具が使える
ハブコーンレンチは上の写真の安っぽいペラペラのレンチである。薄刃の両口スパナで事足りるのだが、通常のスパナセットには何故か13㎜と15㎜は含まれておらず、ハブコーンレンチとして購入する必要がある。
ハブコーンレンチセットとして3本組や5本組が売られているが、何かの工具で薄刃のスパナセットを既に持っている場合は14㎜や17㎜はダブってしまうので、上記のサイズがコンビになったハブコーンレンチ一つで事足りる。
当然プロはスパナにしろハブコーンレンチにしろ立派な高級品を使うが、アマチュアはこれで十分だ。
ハブグリスは、通常シマノ プレミアムグリスを使用するが、自分はAZのセラミックグリースを使用した。
プレミアムグリスは粘度が高く、ハブの回転が重いとの話を訊いていたからだ。純正品でもあり耐久性や耐水性重視であれば、それが間違いないが、自分の場合ノーメンテナンスにするつもりはないし、雨天時は走らないばかりか、その翌日も水たまりが嫌で走らないので、耐久性や耐水性は重視する必要がなく、回転性重視でこれを選んだ。
また以前のホイールを分解した時、ハブベアリングが虫食いでいかれていたのだが、ダメ元でミニ4駆用のセラグリスを使用したところ具合が良かった為、今回もセラグリスとしてみた。ただしミニ4駆用ではさすがにアレなので、自転車用となった次第である。
パーツクリーナーは速乾性の通常のスプレーと、遅乾性のチェーンクリーナーの2種類を使用した。簡単に汚れを落とせる物は速乾性が便利だが、複雑な形状で奥まった場所の汚れを取りたいときには、速乾性ではすぐに乾いてしまって都合が悪い。
また、一部のパーツクリーナーはゴム部品を痛める可能性があるが、チェーンクリーナーの方はシールチェーン対応品であればゴム部品にも安心して使用できる。
これらもAZ製を使用した。
ウエス類は古下着を切った物では糸くずが出て使いにくい。ティッシュやキッチンペーパー等もすぐに破れて紙の繊維が付着するなど同様である。自分が愛用するのはワイプオールという物である。ペーパータオルの一種だが、強度が高く複数回使用出来、繊維くずが出にくい。
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それでは、簡単な方のフロント・ハブから分解しよう。
フロント・ハブは左右対称の構造なので、どちらサイドを緩めても同じだが、自分は右サイドと決めている。ダブルナットとなっているので、外側に17㎜のスパナ、内側に13㎜のハブコーンレンチを掛ける。ハブコーンレンチを右手で固定して、左手のスパナの方を半時計回りに緩める。
勢いあまって手が滑って、スポークに当たったりすると怪我をするので厚手の手袋をした方が良いだろう。ハブコーンレンチも薄いので素手で抑えると痛い。
ナットを全部緩めると上の写真の様に外れる。ハブ軸とゴムシールの隙間からベアリング球が入っているのが覗ける。
ここから先は手が油だらけになるので、細かく写真は撮っていないが、ご容赦願いたい。
この状態で、中のベアリング球がバラバラに落ちないように、静かに車輪を持ち上げる。新聞紙の上にハブ軸だけが残る。
ハブ軸が抜けたら、車輪を静かに新聞紙の上に降ろす。
ハブの内側の穴からピンセットを突っ込んで、ベアリング球を一個一個落さないように抜き取る。球は11個ある。穴の中に落してしまっても後で拾う事は可能だが、左右のベアリング球は混ぜない様にするのが理想*3なので、落さないよう注意する。
取り出した11個のベアリング球は小さなトレイに入れておく。
片側のベアリング球が全部抜けたら、車輪を裏返して、逆サイドのベアリング球を抜く。こちらは既に反対側のベアリング球と混ざる心配がないので、落さないように慎重にならなくても良い。ただ無くさないようにだけ注意する。
先に取り出したベアリング球と混ぜない様に、別のトレイに入れる。
ハブ軸の刺さっていた穴の入り口はゴムシールになっている。穴の中にマイナスドライバーを斜めに突っ込んでテコの様に持ち上げると外せるが、固くて外しにくいので無理をしない。破損してしまっては元も子もないので。
シールを外した方が洗浄作業がやりやすいが、付いたままでも一応は可能である。
トレイに入れた、外した部品の写真。古いグリスでベトベトである。
この後パーツクリーナーでグリスを洗浄するが、左右のベアリング球を混ぜない様に注意する。またゴムシールには速乾性のパーツクリーナーではなく、ゴムへの攻撃性がないチェーンクリーナーの方を使用する。
トレイに入れた部品は複雑な物ではないので、洗浄は簡単に終わる筈である。
面倒なのは車輪に残ったハブの本体側である。同じグリスを使用するのであれば、ある程度手を抜けるが、今度使うグリスは全く種類の違う物なので、元のグリスと混ざらない様に完全に洗浄しなくてはいけない。
狭い穴の内側にこってりとグリスが盛られているので、何度もスプレーを吹いて洗浄するが、噴射の勢いだけでは流れてくれない。ワイプオールの角をねじって紙縒りにして、穴に突っ込んでグルグルしたりしてこそげ落すが、根気のいる作業となる。
ハブの部品だけなら、タッパーに漬け込んで洗浄できるが、ホイール込なので不可能だ。
結局、皆がプレミアムグリスを使うのはそういう理由なのかと納得する。元のグリスと同じ種類なら、洗浄は適当でもあまり問題ではない。
先にも書いたように手が油まみれになるので、いきなり写真がワープする。
元のグリスが完全に落ちた前提で、既にセラミックグリスが塗られて11個のベアリング球がカップに載っている。
プレミアムグリスの場合はベアリング球が完全に埋もれてしまうほど、盛り盛りにグリスを塗り込むべしなどという人もいるが、セラミックグリースの場合はそんなに盛らない。ベアリング球がくっ付いて落ちない程度に塗るだけだ。AZの説明書にも薄めに塗布とある。ゴムシールと軸の方にも少なめに塗布とはいえ、しっかり全面に塗り付け、ハブの穴に軸を挿入する。
挿入した軸が落ちないように車輪を裏返して、反対側のベアリングカップにまたグリスを塗布してベアリング球を並べる。
グリスを塗布したゴムシールを押し込み、ベアリング球を押さえるコーン部の付いたナットを手で回してねじ込む。
ベアリング球が並ぶカップとそれを押さえるコーンの組み合わせで、この形式のベアリングをカップ&コーンと呼ぶ。
残りのワッシャーとロックナットも手でねじ込むと、形としては元通りとなる。
手でナットを回しても当然緩々なので、バラした時のようにハブコーンレンチとスパナで今度はネジを締める。
しかし、単純に締め付ければ良い物ではなく、コーン部のナットの締め具合でベアリングの回転の重さが変わる。ギチギチに締めれば当然回転は重くなり、緩く締めれば回転は軽くなる。しかし緩すぎてガタが生じてはいけない。
ガタはベアリングの損傷に繋がるので絶対あってはいけない。ガタが絶対なく、なおかつスムーズに回転する絶妙の案配でナットを締める事が求められる。これを玉当たり調整という。
実際は、短距離で終わったらすぐにまた分解調整するレースでもない限り、回転のスムーズさよりガタがない事を優先して調整する。手で軸を回した時少し固いなと感じる程度が良い。それでもホイールの外周部を押して回す時は軽く回る。
コーン部のナットの調整が上手くいったと思ったら、それが緩まない様に外側のロックナットを締め付けて押さえるが、この時に調整が狂ってしまわない様にハブコーンレンチでコーン部のナットを固定しつつ、ロックナットのスパナを時計回りに締める。
だが、実際はそう簡単ではなく、ロックナットと共にコーン部のナットも回ってしまい、最初に狙った固さよりも重くなってしまう事が多い。
つまり、調整が一発で決まる事は稀で、何度か緩めては締めるという行為を繰り返す事になる。
上手くいかないときは、回転の軽さよりもガタがない事を優先する。先にも云った様にガタはベアリングに損傷を発生する原因なので、その方がマシなのである。
フロントが終わったらリアである。
リア・ハブはフロントとは違い左右非対称である。スプロケを取り付けて一方向にしか回転しないフリーホイールも付いている。スプロケはあらかじめ取り外しておく。
リア・ハブはフリーの反対側である左サイドのナットを緩める。フロント同様ダブルナットにスパナとハブコーンレンチを掛けて緩めるが、リアはハブコーンレンチの15㎜側を使用する。ロックナットは17㎜のスパナのままでよい。
説明を端折るが、ハブ軸とベアリング球を抜いた後、フリー側の穴に10㎜の6角レンチを突っ込んで反時計回りに緩めると、フリーを固定しているボルトが抜けてフリーも外せる。
実際はこの6角レンチでは短く力が入らない。バイスプライヤーを掛けて無理やり回している。この倍くらいの長さの6角レンチを用意した方が良い。
またまた写真がワープして、既に洗浄が終わった部品である。
ベアリング球の数はリアは片側9個だ。
右サイドのゴムシールはフリーに付いているが、固くて無理をすると破損の恐れがあったため外していない。それでも何とか洗浄した。
フリーは内部のラチェット部の分解は推奨されていないので、ただ外しただけである。フリー内部へのパーツクリーナーの侵入は悪影響があると思われるので、スプレーでの吹付はなるべく避け、主にワイプオールで拭って綺麗にした。
洗浄前の状態だが、グリスの変色はフロントより激しく、ベアリングの当り面の削れも目視でハッキリ見えるほどで、これ以上の放置はやはり危険と思われた。フロントはまだ余裕がある様子だったが、リアの方が負荷が重く、ローラー台を使っているので、フロントの走行距離は2000㎞に達していないからだろう。
後は、またまた説明を端折るが、余計なフリーが付いているだけで要領自体はフロントと同じである。元のグリスはぎっしりコテコテに盛られていたが、リアもわずかな量しか塗布しない。
15gという小容量のセラミックグリースを購入したが、余裕で4回は使えそうである。
以上、約2000㎞でシマノのカップ&コーン式のハブを分解整備したが、リアは危険を感じる状態だった。やはりこの方式のホイールはノーメンテナンスという訳にはいかない。2回目以降は当りが付いているので、もっと長い距離走れそうだが、最低でも年1回のメンテナンスは必須だろう。
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*1:説明書には使用開始から1000㎞を目安にスポークテンションの調整と書いてあり、ハブについては書かれていないが、車のエンジンオイルの交換が初回は早いように、当りが付くまで削り粉が多く出る為ハブについても初回は早目の分解調整が必要と思われる。
*2:しかしベアリングの寿命が無いわけではなく、そのうちいつかダメになる。ベアリングの交換は可能だが、作業が高度で手間賃を考えると部品交換より、元々安物のホイール自体を買い替えた方が現実的である。その様な理由でメンテナンスフリーといっている。
*3:左右のベアリングで摩耗度が違って、それぞれの部品の当り具合が変わらないようにする為。フロントはマシだが、リアは左右の構造が違い負荷も大きいので特に注意する。軸も当然左右を入れ替えてはいけない