今回もローラー台の話題。
前回気になるブックマークコメントを頂いた。
自転車のローラー台3方式、固定ローラーに決めた理由 - スネップ仙人が毒吐くよ
練習量が一定以上になるとタイヤ代金がかかるので、専用タイヤ(込みのホイール、スプロケ一式)かダイレクトドライブにした方がランニングコストはおさえられます。Zwiftするならダイレクトドライブ。
2018/12/15 23:11
普通の人には分かりにくいコメントなので、翻訳すると
タイヤで直接ローラーを駆動するタイプの固定ローラーはタイヤが摩耗するので、ローラー台専用のホイールとタイヤを用意して、それに取り換えるか、タイヤで駆動しないで、自転車のチェーンをローラー台のギアに引っ掛けて駆動する、ダイレクトドライブのローラー台にした方が良い。
というお話。
まあ、自分はロードバイクに乗り始めて一年目の初心者でもあるので、先輩としてのアドバイスなのだろう。
有難うございますと素直にいうべきだろうが、その様なことは調査済みである。
こんな具合だから、生意気だとか、嫌われてしまうのだろうが……
大体、貧乏性じゃなくて本当に貧乏なので、下手に手を出して失敗をしたくないので、ネットで調べればすぐ分かるような情報は殆ど知った上で、物を買うようにしている。
そんなら、素直に専用タイヤを買えば良いとか、ダイレクトドライブを買えとかいう話をしたがる人がいるが、知った上であえてお金がないから、そうじゃない選択をしている。
だって無い袖は振れないから!
これが、うちのブログの大前提なので、以降お見知りおきを。
初心者にお気使い有難うございます。
でも、その問題は心配ないのですよ。
何故なら、このエリート スーパークロノ・ハイドロマグ・エラストゲル、既に100㎞以上使用しているが、タイヤが摩耗する気配なし。
タイヤドライブの固定ローラーは、タイヤカスが飛ぶとか、あっという間にタイヤが台形になるとか、噂は訊いていたが、その様な事は今のところ感じられない。
まあ、100㎞位じゃ分かんないよな。
その通りだと思うが、じゃあ実走はどうなのか?実走しても100㎞位じゃタイヤの摩耗なんか分からない。その10倍、1000㎞走れば、タイヤ減ったと分かるけどさ。
結局、実走と変わんないという話。
実走レベルの摩耗なら、別に専用タイヤを用意したり、高価なダイレクトドライブにしなきゃいけない理由にはならんでしょ。
文章で話だけで、減らないって書いても、証明する物は何もなくて、信じてもらうしかないんだけど。
逆に減りまくるとか、タイヤカス出まくり、って事なら写真で見せられるけど、無いものを撮っても証明にならんし、困っちゃうんだけどw
尤も、タイヤが摩耗するというのも一般的なタイヤドライブの固定ローラー台のイメージとしては間違っていなくて、このエリート スーパークロノ・ハイドロマグ・エラストゲルが変わってるのだ。
てな感じで、長い前置きなんだけども、実は一般的な固定ローラーの代表としてミノウラのマグネット式のハイパーマグという台も20㎞ほど試用しているので、以下使用感の違いを述べたい。
上の写真、左がエリート スーパークロノ・ハイドロマグ・エラストゲル、右がミノウラのマグネット式ハイパーマグである。
長いので以下、エリート ハイドロマグ、ミノウラ マグネット式とする。
両者、先ずフレームの作りが全く違い、自転車の後輪の固定方法が違っている。
ローラー台のフレームを単純化して横から見ると、エリート ハイドロマグは片持ちで斜め上下に振れる棒の先に後輪が取り付けられている。一方ミノウラ マグネット式は後輪は完全に固定されていて振れる事はない。
また後輪を押さえているパイプの形状も、エリート ハイドロマグは楕円パイプに対し、ミノウラ マグネット式は角パイプである。
つまり同じ固定ローラーといっても、エリート ハイドロマグは柔軟性を意識しており、逆にミノウラ マグネット式は強固に固定する事を意識したフレームデザインである。
実際にロードバイクを漕いでみると、エリート ハイドロマグは左右に車体が揺れるが、ミノウラ マグネット式は全く揺れない。
これは素人目にはミノウラは安定感抜群で安心して力いっぱい漕げるといった感想も見かけるが、応力が自転車のフレームの弱い部分に集中して破断するなどのトラブルに繋がるので実は良くない。エリートの方が応力の逃げがあるので自転車には優しいし、揺れる物を揺らさないように漕ぐのもテクニックである。
以上のようなフレームデザインの為、自転車のタイヤをローラーユニットに押し付ける方法も違っている。
エリート ハイドロマグの場合は自転車の後輪が斜め上下に可動するので、自転車の車重でタイヤを固定されたローラーユニットに押し付ける。勿論車重には人間の体重も含まれる。地面に車重が乗ってタイヤが押し付けられるのと同じであり、自然な走行感が得られる。乗るだけなので、特別な調整もいらない。
一方ミノウラ マグネット式は後輪ががっちり固定されて空中に浮いているので、ローラーユニットの方をネジとバネで押し付ける方式である。
ダイヤルでネジを回して、適当な圧力でローラーがタイヤに接触するように調整する。
マニュアルには3~4㎜タイヤが凹む位とアバウトに書かれている。圧力は弱すぎるとタイヤがスリップして摩耗しやすくなるので、強い方が良いとも書かれている。ただし、強すぎるとタイヤ変形が大きくなるので高速でバーストの恐れがあるとも。
文章にするとタイヤが3~4㎜凹む位と、具体的な数字が書かれているが、実際は目安となるゲージがあるわけではなく目分量でしかない。
セカンドバイクをローラー台専用にしている場合は良いが、自転車1台でローラー台と実走を繰り返し使用する場合は、毎度調整をやり直さないといけないし、その調整もいつも同じになるとは限らない。これは非常に使い勝手が悪い。
ミノウラ以外のメーカーでは適当な圧力になるとダイヤルが空回りしたり、レバーを倒すとバネで適当な圧力に自動調整されるローラー台もあるが、ミノウラは現行品でもこういう使い勝手の悪い方式である。
尚タイヤの空気圧は通常の1割増し、もしくは100PSIが推奨の様である。この空気圧も最近のロードバイクの流行からすると高い値である。
タイヤと地面の接触圧は走行条件によって変化するのが当たり前で、固定された接触圧では自然な走行感も得られないだろう。
外観から判別がつく、大きな違いは以上の2点であるが、負荷を生むローラーユニットの内部構造も随分違った物である。
エリート ハイドロマグは名前から分かるように、ハイドロとマグネットのハイブリッド方式である。
ハイドロとはフルード式と一般的にいわれる方式で、粘性のあるオイルの中を羽が回る事で負荷を得る。
マグネット式は対向する永久磁石の間に置かれた非鉄金属のローターに生じる電磁誘導を負荷とする。
ハイドロ式はオイルの粘性と羽の形状で抵抗が決まってしまうので、負荷の強さを容易に変更できないが、マグネット式は対向する磁石の間隔を変更する事で容易に負荷の強さを変更できる。
このように書くと、ハイドロよりもマグネット式の方が利があるように聞こえるが、ハイドロ式にもメリットがあり、低回転では低い抵抗だが、回転が上がるにつれ2次関数的に抵抗が大きく立ち上がる特性があり、実走で感じる空気抵抗や転がり抵抗の特性と近似で走行感が自然なのである。
マグネット式の場合は回転数と抵抗は直線的に比例しており、実際の走行感とは違った物である。
原理はさておき使用してみると、エリート ハイドロマグは負荷を調整するダイヤルノブを最弱にすれば純粋なハイドロ=フルード式であり、漕ぎだしは軽く、スピードを上げるにつれ抵抗を感じる自然な走行感である。ただし負荷は全体的に軽めで、きついと感じる運動量を得るには30㎞/h以上の高速で回す必要がある。
ダイアルを回すと、ハイドロの負荷にマグネット式の負荷が底上げされて、低速でもやや重めのペダリングとなる。
しかし、純粋なマグネット式よりは軽めの負荷設定らしく、最強の5にしても3%程度の坂道を走っているような感覚で5%には至らない。ギアを重くして速度を出せば負荷はきつくなるわけだが、5%の坂を30㎞/h以上の高速となると実走とは違う走行感覚である。
ミノウラの場合は純粋なマグネット式であり、最弱負荷でも漕ぎだしから全く走行感覚が違う。
漕ぎだしから、いきなり何かが引っ掛かるような抵抗を感じるのだ。しかも低速ではカクカクとムラのあるぎこちない抵抗である。モーターの回転ムラでコギングというのがあるが、それと同じような感覚だ。スピードが上がるにつれぎこちなさは消えるが、全体的にエリート ハイドロマグより重い。最初から平地ではなく坂を登っているような感じである。
しかし、負荷の強度の幅はあまり広くなく、最強にしても10%以上の激坂になるわけでなく7%程度の雰囲気である。それでもエリート ハイドロマグよりはずっと重い。
エリート ハイドロマグの場合は運動強度を上げる為には30㎞/h以上の高速を出す必要があったが、こちらは30㎞/hを出すこと自体が難しく必死になって回してやっとという感じである。貧脚といえばそれまでであるが、20㎞/hでも十分な運動である。トレーニング機器として負荷が高いのは優秀かもしれないが、ロードバイクを高速で走らせるような爽快感は味わえない。漕いでいて気持ちが良いのは、断然エリート ハイドロマグの方である。
長くなるのでまとめるが、
エリート ハイドロマグは、
- ロードバイクへのフレーム負担が低い
- セッティングが容易
- 実走感が高い
- 負荷強度はやや物足りない(速度で補う
ミノウラ マグネット式は
- ロードバイクへのフレーム負担が高い
- セッティングが難しい
- 走行感覚に違和感(低速から重すぎ
- 負荷強度は十分
といった違いがある。
更に、冒頭の話に立ち返ると、ミノウラ マグネット式の場合、セッティングが難しい為にベストな状態を維持しにくく、漕ぎだしから重い走行感覚の問題があって、タイヤはスリップしやすく、それ故摩耗もし易いように思われる。
セッティングでタイヤの圧着を弱くすると、転がり抵抗が減るのか、漕ぎだしも軽くなるが、それはメーカーの説明では逆にタイヤを摩耗させる悪いセッティングである。
メーカーの説明を信じるならば、ベストなセッティングであれば、摩耗は実走と同程度という話だ。
タイヤドライブ式の固定ローラーの大半はミノウラ マグネット式と同じタイプである。これらのローラー台を使用して、タイヤが異常摩耗する例は確かに多いのだろう。
エリート ハイドロマグのような自重式かつフルード式のローラー台は少数派である。
走行感覚は普通のマグネット式とは相当違いがあり、固定ローラーはどれも同じような物と思われているなら誤解だと思う。
先にも云った様に証明するものはないが、エリート ハイドロマグのタイヤ摩耗は実走と変わりがないものだと思う。
最後に肝心なことをいうと、騒音の大きさで比較するとミノウラ マグネット式の方が有利である。エリート ハイドロマグはレベルは低いが低周波のブーンという音と振動がある。また運動強度を上げる為には高速で回す必然性があり、その為煩くなり易い。対してミノウラ マグネット式はヒューンという高周波の音がするが、低周波の騒音はしない。高速で回さなくても十分な運動強度があるので煩くなり難い。
フルード式は静かといわれることもあるが、それは低速で緩くポタリング気分で回した時に限られるというのが、自分の感想である。
結局、我が国の住宅事情を考慮するとミノウラ マグネット式の方が有利で、それ故こちらのタイプの方が普及したといえるのかもしれない。
なお、誤解のないように付け加えるが、エリートでも自重式でないタイプのマグネット式もあるし、ミノウラにも自重式やフルード式の物もあるので、全てがこうという事ではない。
あくまで代表例としての比較である。
これは自重式と固定式を切り替えて使用可能である。