自分のブログの或る読者さんが、デジカメでマクロ撮影をしたときに、思ったところにピントが合わないと悩んでおられる様子。
自分のブログの影響なのか?先日、クローズアップレンズを購入されたとの事。
しかし、オートフォーカスでピントが合わず、マニュアルフォーカスで合わせたと嘆いておられた。
やや古いミラーレスカメラで、AFが自分の一眼レフと仕組みが違う「コントラストAF」方式。EVFも無く液晶モニターでのピント合わせと、カメラが違うといってしまえば、そこまでの話ではあるが……
気の毒というか、自分にも責任があるような気もしたので、深く考えてみた。
AFの方式の違いはここでは深く突っ込まない。
自分のカメラは「位相差AF」で、速度では「コントラストAF」より優位である。
しかし、良く調べてみると正確性では「コントラストAF」の方が優位であるとの事。
だから「コントラストAF」であるミラーレスのピントが合わないのを、オートフォーカスの方式の違いとは決めつけられない。
それよりも、怪しいと思ったのはオートフォーカスの設定と操作方法である。
ミラーレスや一眼レフでは基本2種類のAFモードがある。AF-SモードとAF-Cモードである。
※AUTOモードについては、各機種特有の機能とアルゴリズムがあるので、ここでは語らない。
AF-Cモードは動き回る動体を追いかけてピントを合わせるモードで、風景や静物を写す一般的な撮影には使わない。
マクロ撮影の場合は当然AF-Sモードを使用する。ここで間違えるとは思わないが、念のため言及した。
さて、AF-Sモードの話に絞ろう。
これは、オートフォーカス・シングルモードの略であり、一点にピントを合わせるという意味である。
AF-Sモードではシャッターボタンを半押しにしてピントを固定するフォーカスロックの操作が可能になる。
AF-Cモードでは動く被写体に随時ピントを合わせ続ける為、フォーカスロックはできない。
デジカメの全くの初心者でない限り、フォーカスロックの使い方は大体理解しているだろう。
通常デフォルトの状態ではAFのピントの合うエリアは中央に固定されていて、先ずピントの合わせたい部分を中央に合わせてAFを動作させ、その後シャッターボタンを半押ししてピントをロック、最後に構図を決める為に被写体の位置を変えてシャッターを切る、という手順になる。
これが最も基本といえるAFデジカメの撮影方法だが、マクロ撮影でピントがズレてしまうのはこの方法に原因がある。
下手なポンチ絵だが、フォーカスロックの操作を図示したものだ。
左図が通常撮影時、右図がマクロ撮影時となる。
中央で一旦距離を合わせて、被写体をファインダーの右端に移動した場合を示している。
この場合、通常撮影時では実際の被写体の位置とロックしたピントの位置とのズレは短いが、マクロ撮影時にはズレが長くなっているのが分かるだろうか?
これがマクロ撮影時にピントが合わなくなる原因である。
通常時と同様に被写体を中央から端に移動させても、距離が近いとカメラの向きを変える角度が大きくなるためピントのずれが大きくなるのだ。
これを防ぐ対策方法は3つある。
- 構図は角度を変えるのではなく、平行移動する
- AFエリアを中央一点から任意の位置に移動する
- マクロレンズではなく望遠レンズのテレマクロを利用する
である。
1.構図は角度を変えるのではなく、平行移動する方法は、特に説明はいらないだろう。角度が付いて距離がズレるなら横に平行移動して構図を合わせるだけの話だ。訓練して慣れるだけである。
2.AFエリアを中央一点から任意の位置に移動する方法は、少し説明がいる。
実は、AFの基本は中央一点フォーカスであるが、殆どの一眼レフやミラーレスカメラでAFエリアを任意の位置に移動することが可能だ。
旧型のカメラでは十字ボタンを使って、新型では液晶モニターがタッチパネルになっていてAFエリアのマークを直接指先で指定して移動することも可能である。
自分のカメラは旧型の為AFエリアは僅か11点しかないのだが、それでもエリアを被写体の近くに移動すれば構図をあまり変えずにピントを合わせる事ができる。
進んだ最新のデジカメでは、ファインダーのほぼ全面にAFエリアを移動することが可能だ。
詳しくは説明書を参照して欲しい。
実例として以下の画像を用意した。
この2枚、ほぼ同様に見えるがピントの位置が微妙に違っている。
上がスライムの左目にフォーカスロックしてから構図を変えた写真。
下は構図を変えずにAFエリアを左目に移動してピントを合わせた写真である。
分かりにくいのでトリミングする。
スライムの目のピントが微妙に違っているのが分かるだろうか?(写真を拡大して確かめてほしい)
下の目の方が微妙にコントラストがはっきりしている。ここまでピントに拘る人は少ないだろうが……
ちなみにAFエリアを中央一点でこの写真の構図のままピントを合わせようとすると、中央にはコントラストの差のある物がないのでピントが合わない。
3.マクロレンズではなく望遠レンズのテレマクロを利用する方法は、レンズの撮影距離の違いがピントの合わせやすさに影響するという事である。
テレマクロというのは倍率の高い超望遠レンズで、離れたところで被写体を拡大撮影する方法である。撮影距離を長く取れるので、フォーカスロックで構図を変えてもピントがズレにくいのである。
自分はTamron 70-300mm F4-5.6 AF LD Macro(472D)というレンズを多用しているが、これがまさにテレマクロなのだ。
以下の写真もこのレンズによるものである。
このレンズは最短撮影距離が1m50もあるレンズで、一般のマクロレンズが数十センチ以下であるのと比較すると、フォーカスロックで構図を変えた場合の角度変化は比較にならないほど小さいわけである。
通常のマクロレンズに比べるとシャープさで劣るが、使い勝手は非常に良くお勧めのレンズだ。現行品ではTamron A17というのが相当する。A17ではマクロスイッチが付いて最短撮影距離は95センチまで短縮、より大きく撮影できる。
TAMRON 望遠ズームレンズ AF70-300mm F4-5.6 Di MACRO キヤノン用 フルサイズ対応 A17E
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