先日のエントリで芸術系出身者と書いたが、音楽系には全く知識がないので、美術系に絞っての話。
専門家でもなんでもないので、綺麗に整理出来ず、思いついたことを順に書くが、参考になれば幸いだ。
自分は漫画家になりたくて美術系に進んだが、具体的にいうと、東京の某美術系私大の商業デザイン科*1に現役で入った。
大体、美術系を受験するといっても、絵画科や彫刻科などの純アート系は才能がなく、全く無理な実力だったからである。
当然、芸術系で最高レベルの東京芸大は、浪人するならともかく現役では無理である。
高2の時点での絵の実力から、在籍高校のベテラン美術教師と相談して進路が決定された。
だから、自分の場合は何がやりたいかではなく、進学校でありながら落ちこぼれていた学力と画力の判断でそうなったわけだ。そもそも、学力が高ければ、美大進学という発想自体なく、在京の一般文科系大でも漫画家は多く輩出されているのだから。
ただ、東京だけは絶対に外したくなかった。漫画出版社は東京にあるわけで、イベントや、漫画家のアシスタントをやるにしても、東京以外の選択はないからだ。
また、漫画家が目標でなかったとしても、東京は国内ではアート・デザイン・文化の中心地であり、美術系を目指す人間が東京に憧れるのは当然なのだ。
単に絵画・イラストばかりでなく、演劇・映像・建築・商品ディスプレー等、全ての文化活動で圧倒的なボリュームを誇るのが東京である。
だから、東京にいる人間は才能・資質関係なく、それらの刺激の中に身を置いているだけで、田舎の人間より文化的レベルが高くなるのである。ただ住んでいるだけで、物知りの人間が多いのだ。
東京芸大、多摩美、武蔵美、造形大の4校はこの点で、他地域の美術大学よりアドバンテージがある。
地方にも優れた内容の美術大学がないわけではないが、この事はよく考える必要があるだろう。
とはいえ、西洋美術やポップカルチャーに興味はなく、和物の伝統工芸をやりたいとかいうのであれば、京都や金沢に行くのも一つの考えだ。だが、そこへ進むということは選択肢が相当狭くなる事を覚悟しなければいけない。
東京へ行けば、物の見方が広がるので、最終的な選択肢も広がるのである。
ここまでは大学の地域性を述べたが、別の視点を語ろう。自分は商業デザイン科に行ったわけだが、対極的に工業デザインというのもある。
商業が、主に平面的な広告やイラストを扱うのに対し、工業は、立体的な工業製品やグッズ類のデザインを扱う。
自分は商業デザインで入学して漫画研究部に入ったのだが、同じ部内でも、工業デザインで入って、玩具メーカーに進んだ人もいた。
アニメや漫画が好きだからと、漫画家しか考えていなかった自分には、忘れていた進路だった。
もっとも、工業の方が受験スキルは難しいのかもしれないが、オタク趣味だからといって絵のことばかり考えているのは間違いだ。
また、玩具メーカー以外にも、電器、自動車、家具、住宅機器等、あらゆる商品のメーカーから、工業デザイナーは需要がある。美術系は食えない物だと思い込むと、適性があるのに、チャンスを失う事になる。
商業デザインの中でも、進路は細分化される。イラスト・編集・タイポグラフィ・ロゴデザイン・写真etc.
人によって適性は様々だ。とりあえず美大に入って、最終的にベストな進路に進めればそれで良いのだ。
また、同時に教員免許を取ることも可能である。地元に戻って美術教師になっても良い。
学校によっては、伝統工芸、テキスタイル、映像、舞台芸術等、得意分野を持っているところが多い。それらも考慮すべきである。
先日の自分の発言と矛盾するようにも感じられるが、美術系だからといって、一様に食えないからダメとは言い切れないのである。
近視眼的に思い込みがちな本人の意思を確かめつつも、進路は一様ではなく、幅が広いことを示すのも、親や教師など周囲で見守る者の務めではないだろうか。
*1:実際は大学によって専攻科の呼び方はいろいろある