もう2日前の話になるが、5月8日(日)にFM福井の音楽イベントが福井駅西口にオープンした再開発ビル「ハピリン」で開催された。
そのイベント企画の一つとして行われたのが、ハイエンドオーディオ試聴会だった。
福井でLOVE PSYCHEDELICOライブイベントを開催♪ - オーディオスペースコア
上記のリンクにある通り、正確なイベント名は「Audio Space CORE ピュアオーディオラボ ピュアオーディオ視聴会」である。その宣伝をFM福井の放送で聞いて会場に足を運んだのだった。
FM福井の放送では、最高級ブランド「DYNAUDIO」(ディナウディオ)のスピーカーという言葉が強調されていたのだが、この名を聞くのは自分は初めてだった。
自分には安物オーディオを楽しむ趣味があるのだが、最もオーディオにハマったのは今から30年ほど前の20代の時、CDが登場して間もない頃で、最近のオーディオ事情については詳しくない。
無職で金もないので、海外オーディオには無関心で過ごしてきた。B&Wのノーチラスくらいは知っていたが、当然ハイエンドクラスの機器どころか、iPodさえも買えない訳で無関心を装ってきたわけだ。
せいぜい、安物PCスピーカーやPC内臓オーディオの改造に精を出すくらいである。
高価なオーディオ機器を買える筈もない自分は完全に冷やかしでしかなく、この試聴会に参加していいものか、更新が遅い自作漫画のエントリの為に時間を使うべきではないかと、葛藤があったものの、近場で行われる数少ない機会、会場の様子を見るだけでもと、気軽に足を運んだのだった。
なお事前情報の収集は十分でなく、総額1,000万を越えるハイエンドオーディオという事は昨日調べて知った話で、高級オーディオといってもCDプレーヤ100万、アンプ100万、スピーカー100万で、せいぜい300万くらいというイメージだった。
その値段であっても、自分にとっては夢のような超弩級オーディオであり、いったいどんな別次元の音が聴こえる物かと、興味津々だったのだが…。
すっかり、前置きが長くなってしまったが、結論を書こう。
現場では上記のように300万程度と思っていたのだが、その値段に見合わない酷い音と感じて、直ぐに帰ってしまった。
機器を持ち込んだオーディオショップのマスターとも帰り際短い会話をしたのだが、
「正直言ってあまりいい音とは思えない。中低音に酷い歪があるし…」
と言うと、
「昨日の夕方(出来たばかりの)会場に入ったばかり(でチューニングが不十分)なので。さっきも言った通り新しい会場なので部屋が(音響的に)こなれていないので。床もこんなブカブカだし」
※()内は自分の意訳
という答えだった。
以下非常に長い話になるのだが、詳細を書く。
自分が参加したのは、14:00~の【LOVE PSYCHEDELICO“ABBOT KINNEY”試聴会】だった。
その日、ハピリン内の大ホールでコンサートを行うアーティスト、LOVE PSYCHEDELICOのCDアルバムを丸々一枚聴かせるという企画だ。
使用機器は以下のラインアップだった。
スピーカー
DYNAUDIO (ディナウディオ) Confidence C4 Platinum
価格参考:
Confidence_C4_Platinum | DYNAUDIO | スピーカー | 通販特価お見積り致します オーディオ専門店AVBOX
標準価格:2,900,000円(ペア税抜き)
CDプレーヤー
YBA Signature CD
価格参考:
YBA Signatufe Series|アポロン・インターナショナル 輸入オーディオ・ケーブル販売
標準価格:オープン 市場実勢価格:¥2,680,000前後(税別)
プリ・アンプ
YBA Signature Pre Amp
価格参考:
YBA Signatufe Series|アポロン・インターナショナル 輸入オーディオ・ケーブル販売
標準価格:オープン 市場実勢価格:¥2,550,000前後(税別)
パワー・アンプ
YBA Signature Power Amp
価格参考:
YBA Signatufe Series|アポロン・インターナショナル 輸入オーディオ・ケーブル販売
標準価格:オープン 市場実勢価格:¥2,930,000前後(税別)
どれも単品250万を越える市場価格で、それがx4だから総額1,000万越えの超弩級価格であることが、帰ってきてから判明した。
個人的な見た目の印象をいうと、スピーカーは最大でも17cmの口径で、昔の巨大なスピーカーを見慣れた目からは高すぎる気がするが、低音・中音・高音それぞれのユニットを二個ずつ縦に対照的に並べる仮想同軸という手法を用い、キャビネットも正面からは細く見えるが、奥行きがたっぷり長く、高さもあるので、見た目より高価になってしまうのかもしれない。
CDプレーヤーとアンプはカタログの写真を見る限りでは、中身ぎっしりである。筐体もアルミのブロックを機械加工で丸々削りだした構造で、中身のチープさが話題になったゴールドムンドとは違う、価格に見合った物に見える。
まあ、問題は見た目ではなく、オーディオ機器なのだから出てくる音である。
実を言うと、事前にあまり情報を仕入れなかったのは、プラセボに騙されたとは思いたくない理由もあった。
会場の部屋について
会場は、大ホールでのコンサートや演劇等の公演の事前練習に使うのが本来の目的のリハーサルルームで、フローリング張りで長辺の左右が鏡貼り。広さは良く覚えていないが学校の教室よりは広い感じ。ダンススタジオのような空間だった。
部屋の奥の短辺に、オーディオがセットされていて、スピーカーは壁から大きく離されて置かれていた。
左手の角に練習用のアップライトピアノが置かれていたのと、天井の左側は梁が張り出して左右対称の空間ではないのが気になった。
聴衆は30人ほどで、自分の座席は左右は中央だがやや後寄りの位置。
部屋の長辺は殆ど鏡だったが、その他の壁は穴が多数開いている吸音壁である。
鏡からの音の反射が気になるのだが、音の反射をコントロールするようなアイテムは見当たらなかった。
2016/5/11 0:40追記:
オーディオショップのブログが更新して、会場の様子の写真がアップされていた。
ピュアオーディオラボ試聴会LOVE PSYCHEDELICOイベント終了♪ - オーディオスペースコア
鏡は自分の記憶よりも、少なかったみたいだ。
音の感想
以下は、多少かじっているとはいえ、ピュアオーディオファンとしては経験の浅い人間の、あくまで個人の感想である。
歳も若くはないので、1万ヘルツ以上の高音も殆ど聞こえない事を正直に明かす。
1曲目から、直ぐにおかしな音がしていると感じた。
バスドラムは流石にハイエンドらしく景気良く「バス、バス」と響くのだが、それより少し上のベースの音が不自然に「ズズーン」と歪んで聴こえてくる。
しばらく聞いていると、部屋の左側に音圧が集中している雰囲気を感じ、中低音の歪みもそこから発生しているような期がする。
ボーカルは自分の嫌いなカ行がキツイ声で、ファンの人には申し訳ないが「キャンキャン」煩く感じる。また普通のアルバムなら、中央奥に定位して聴こえるものなのだが、何処から声が聞こえているのか良く分からない。スピーカーなのにヘッドホン的な聴こえ方がするのが不思議だ。
ギターの鳴りも、ボーカル同様何処から聞こえてくるのかハッキリしない。やや右手の方から聞こえるという印象があるだけだ。音質も荒く「ギャンギャン」とウルサイ。
普通のアルバムなら、他にパーカッションやコーラスが入ったりするものだが、それらは何も聴こえず、耳障りなボーカルとギター、元気に響くバスドラムの印象しかない。
言い忘れたが、このアーティストの音楽はこれまで聴いたことがなかった。だから、最初はそういうミニマムな編成なのかも?と思っていた。
どちらにしろ、全く自分の好みのサウンドではない。
また、1曲目で既に帰ってしまった聴衆がいた。自分も帰りたくなった程だったが、何かの間違いかもしれないので、2曲目も我慢して座っていた。
ところが、2曲目も傾向が変わらない。
自分の耳がおかしいのか、CD自体の録音がつまらないのか、なんだかサッパリ分からない。2曲目でも席を立ってしまう聴衆が数人現れる。
立った聴衆と思われる人物が、オーディオショップの人と会話しているらしい声も聞こえてきた。
12:00~の別のCDアルバムを聴く会では誰も席を立たなかったと、再生が始まる前のMCで説明があったが、本当なのか?
3曲目でも、やはり不快な音を聴かされてしまったので、自分も4曲目以降を聴かずに席を立ってしまった。
どうにも納得いかないので、昨日Amazonのお試しやYoutubeで同じ曲を聴いてみたが、ボーカルの声質が好みでないのは仕様がないが、正面から聞こえてくるように定位するし、ボーカル、ギター、ドラムス以外の音も沢山聴こえてきて、全然楽しげに聴く事ができる。
バスドラムの音だけは流石に負けるが、他はPCスピーカーの方が全然良く聞こえるのだ。
結果の考察
最初に、上で自分は1万ヘルツ以上が聴こえないと書いたので、耳掃除しろとか、おかしいのはお前の耳の方だろうと思う人がいるだろうが、そういう問題ではないと断言する。
一つ一つの楽器の音質を吟味すると言う意味では、加齢で高音が聴こえなくなるというのはハンデだが、オーディオマニアの聴き方というのはそういうものではない。
一つの楽器(または音源)がどんな音を発しているかというのも要素の一つではあるが、どの方向から聴こえて来るとか、どのくらい離れた位置から聴こえるといった事も楽しみの要素で、むしろ自分の場合は完全にそちらに寄った楽しみ方をしている。
ボーカルが中央奥に定位するとは、そういう意味である。
そういう方向性とか距離の要素は、周波数特性による物ではなく、左右の耳に入ってくる音の位相差であり、最も重要なのは中音域で、高音や低音の影響は少ないと考えられているのだ。
だから、高音域が聴こえなくなっているミドルエイジでもオーディオが楽しめない事はなく、実際多くのミドルエイジがマニアであり続ける。彼らは何も聴こえていないのに見栄を張っている訳ではない。
それを踏まえて考察すると、部屋の条件が良くなかったのだろうと推察する。
再生前のトークで、MCのアナが店のマスターがパソコンで何やらチェックしていたとか、ハーモニーホール福井が出来た当初は音が悪くて、年月が経つうちに良い音が出るようになったとか、そういう話を結構強調していて、どういう事なのか?と思ったのだが、立ち去り際に聞いたマスターの「床もこんなブカブカだし」と言いながら足踏みするジェスチャーが、とどめである。
最前列まで行かなかったので、スピーカーの足元まで確認していなかったが、もしかすると直置きだったのかもしれない。
恐らく、床は防音の為ゴムなどの防振材を介して浮かされた状態なのだろう。マニアのリスニングルームではアンカーボルトを打ったりして土台にスピーカーの置き台を固定したりするが、借り物の会場では無理な話だ。
音を発しているスピーカーが揺れてしまえば、耳に入ってくる音の距離も常に揺れている事になり、位相が曖昧になり定位も決まらない事になる。
年月を経ると改善するのは、改良工事をしたというより、浮いている物が締まってきて落ち着くという事なのだろう。
しかし、どんなに高価なオーディオ機器を揃えても部屋の状態次第では、全く酷い音しか出ないとしたら、やはりこの業界ピュアな方向では絶望という感想をもってしまう。
単に金を積んだだけではどうにもならないという意味だし、「多くの若い人に聴いてもらって少しでもピュアオーディオに興味を持ってもらいたい」という意図があったらしいが、逆効果だったかもしれない。