先日、自分が普段読んでいる写真好きな方のブログで見かけた問題。
仏像を撮ったところ、周囲との明暗差が激しい為、何もしないと真っ黒に写ってしまうと悩んでおられる様子だった。
iPhone 7 でも NEX-5 に見劣りしない写真が撮れた(長沼の駒形大仏) - シロッコ手習鑑
自分はブックマークのコメントで、露出の測光設定をスポット測光にして、中央の仏像に合わせれば、真っ黒には写らないと書いたのだが、どうも問題の本質はそういう事ではないらしい。
要は、周りの空の色なども残しつつ、仏像も綺麗に撮りたいとの話である。
自分のコメントした方法では、仏像は綺麗に撮れても、周りは真っ白に飛んでしまうので、それは面白くないのである。
実は、このように明度差(明暗)が激しい被写体をまんべんなく撮るという事は、デジタルカメラにとって苦手なシチュエーションなのである。
デジタルカメラのイメージセンサーが捉えられる明度差はあまり広くなく、適正な値を超えてしまうと黒くつぶれたり白く飛んでしまうのだ。
初期のデジタルカメラはこの範囲がフィルムカメラに比べて極端に狭く、それゆえプロカメラマンにはオモチャ扱いされ普及はなかなか進まなかった。
デジタル全盛時代となって改良されてきているが、依然フィルムの写りに魅了されるカメラマンが多いのは、この特性にも一因がある。
未だに売られているフィルムカメラの代表に「写ルンです」があるが、あのような簡単な仕掛けでも、きちんと写せてしまうのは、この明度差に対する許容度がフィルムは非常に広いので、露出調整が不要だからである。
それでは、デジカメでは全然無理なのか?
一応、撮影技術を駆使すれば出来ない事もない。主な方法は3つある。
- RAW撮影で暗めに撮って、RAW現像で明るく調整する
- HDR撮影機能を使用する
- ストロボ(フラッシュ)を使用する
まず、RAW撮影/現像の説明から。
通常のJPEG保存ではなく、RAWファイルにて保存し、あとでPCのRAW現像が出来るアプリで修正する方法である。RAWファイルは圧縮されていない生のセンサーファイルで情報量が多く、PCのアプリで修正加工の自由度が大きい。
特に真っ黒につぶれて見える暗部の情報は、白く飛んでしまった部分より多くの情報を取り出せる余裕があるのだ。
ある銅像を撮影したものだが、左はスポット測光にて中央に露出を合わせて撮影した写真。右は同様の測光方式だが、露出補正で-4EVに調節して撮影した。
どちらもRAWで撮影しているが、PCアプリで修正が可能なのは真っ黒に写っている方の写真である。
トーンカーブをいじって暗部の黒レベルを持ち上げ、ゴニョニョすると、こうなる。
詳しい事は勉強してくれとしか、ここではいえない。
技術と手間が、そこそこ要るのが欠点か。
HDR撮影とストロボ(フラッシュ)は以下の写真で一緒に説明する。
左から右へと撮影方法を下に並べる。
- 露出適正値で通常撮影
- 露出補正で-3EV
- 露出適正値でHDR撮影
- 露出補正-5EVで内臓ストロボ発光
全てスポット測光で露出は中央の銅像に合わせている。
ぱっと見ではHDR撮影の3番目が一番写りが良い。
HDR撮影というのは、ハイダイナミックレンジ撮影の略称である。
ダイナミックレンジとは、先に述べた明度差に対する許容度の広さの事で、それを高めて(ハイ)撮影する機能のことである。
具体的には露出の違う3枚の写真を連続撮影して、後で1枚に合成する機能だ。
適正露出の1枚に加えて、明るく写る写真と暗く写る写真の前後2枚を合成し、見かけ上ダイナミックレンジが広い写真にする訳である。
これの欠点は、同時に3枚撮るので動体撮影には使えない事である。またJPEG専用でRAW撮影も不可能*1だ。
あと、PENTAX以外の他社はよく知らないが、三脚で固定しないとダメかも。PENTAXは、少々の画像ズレは自動的に補正されるので、手持ち撮影も可能だ。
さて、ストロボ(フラッシュ)であるが、今回はたまたまホワイトバランスが狂って見栄えが悪いのだが、これも有効な方法である。
ストロボ(フラッシュ)は夜に焚く物で、昼間に使う物ではないと思っている人もいるだろうが、明るい場所でも使用する事は可能だ。
明るい場所で行うストロボ撮影を、専門用語で日中シンクロともいう。
手前の影となって暗い場所に、光を照らして撮影する手法である。
上の撮って出しJPEGのホワイトバランスをPCアプリで修正した画像である。
こうしてみると、HDR撮影に劣る物ではない事が分かると思う。
今回はJPEGでの出力だが、日中シンクロであればRAW撮影も可能だし、人物など動体の撮影にも、ある程度対応する。
欠点は使い方が難しい事だ。
場合によっては不自然な光の当たり方になってしまったり、適正露出の見極めが難しい。今回は少し暗く-4EVが適正だったかもしれない。
また内臓ストロボでは力不足で、外部ストロボや、光を拡散するディフューザーが必要な場合もある。
使い方に知識がいるので、ストロボだけの専門書がいくつもある具合だ。
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*1:カメラの機能を使っての内部処理でなく、ブラケット撮影や手動で、露出の違う複数枚のRAW撮影を行って後で合成する事は可能だが、非常に手間のかかる作業だ