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スネップ仙人が毒吐くよ

50代ひきこもりの独白記


BBCに騙されるな、米国車は小型化しても売れない

話題 映像

トランプ大統領が米国車の輸入に関して日本市場を批判した事を受けて、英国BBCニュースが制作した動画が話題である。

www.bbc.com

動画の内容を簡潔にまとめると

  1. 米国車は日本の狭い道には大き過ぎる。
  2. 米国車は燃費が悪いし、左ハンドル。
  3. 米国車は安っぽくて安全とも思えない。
  4. 日本ではドイツ車が人気。
  5. ドイツ車の方がアフターサービスが良い。
  6. 米国車はドイツ車に学ぶべき。

というものである。

果たしてBBCが伝える内容は正しいか?

大いに疑問を感じる。

 

一口に米国車というが、米国メーカーでも様々な車種が生産されている。

国土の広いアメリカ本国では、動画に出てきたような大型SUVが人気ではあるが、多国籍展開している彼等は、古くからヨーロッパでも現地生産しており、そこではフォルクスワーゲンやフィアット等と競合する小型車を扱っている。

 

特にヨーロッパで米国メーカーの人気が高いのが、BBCの本国であるイギリスだ。

2016年のイギリス自動車マーケットシェアで1位なのはフォードであり、2位も実質GMのブランドであるボクスホールである。

ボクスホール - Wikipedia

 

www.best-selling-cars.com

Total

Total

771,780

734,588

100.00

5.1

1

Ford

Ford

93,897

94,804

12.17

-1.0

2

Vauxhall

Vauxhall

75,032

75,176

9.72

-0.2

3

Volkswagen

Volkswagen

57,443

60,388

7.44

-4.9

 

3位にドイツ、フォルクスワーゲンが入る。

上のBBCの動画では「ドイツ車に学ぶべき」といっているが、イギリス本国では既にドイツ車を超える人気を獲得しているのである。

なお、フォードがシェア1位であるのは2016年だけの偶然ではない。

www.statista.com

別の資料になるが、2014-2017の月間シェアでは継続的に12%前後をキープしており偶然の数値でないことは明らかである。

自国で米国メーカーがトップシェアであることを、日本駐在のBBC記者は知らないというのだろうか?

イギリスと日本の交通事情は似ており、同じ右側通行であるのはもちろん、都市部の街路道は狭く渋滞も多い。郊外は日本に比べると平坦な地形ではあるが、道は決して広くはないし曲がりくねったワインディングロードも多い。

そのため昔から小型車の人気は高く、そうした環境があの名車MINIを生んだのである。

 

「ドイツ車に学べ」とは、詭弁である。

 

だいたい、英国で売られているフォード車は英国フォードの現地生産ではあるが、ヨーロッパにおけるフォードの本拠地はドイツであり、単に右ハンドルにローカライズされているだけである。正にヨーロッパでのフォードはドイツ車そのものであるのだがw

イギリスブランドのボクスホールもエンブレムを変えただけで中身はオペルであり、オペルはGMのドイツブランドである。

こうした話は、自動車マニアであれば常識なのだが、一般の日本人、特に車に趣味性を求めていない人達は全く知らない事のようである。

※欧州フォードと米フォードを同一視するマニアはいないというコメントが散見されるが、そんな話はもちろん当然である。だが、日本車も国内のカローラと海外のカローラは別物であるが、同じカローラとして統計的にも同一車種として計算しているのだ。フォードはフォードだし、BBCは分かっていて米国産を止めて欧州産を売れば良いといっているようなものだ。(2017/2/15 15:00追記)

 

フォードの話ばかりになってしまうが、実は日本での販売を手掛けていたフォードの日本法人は2016年を最後に我が国から全面撤退してしまった。

晩年のフォード・ジャパンは米国産の大型車と同時に、ヨーロッパ産の小型車フィエスタやフォーカスの販売にも力を注いだが、販売振るわず無念の撤退となったのである。

 

フォード・フィエスタはフォルクスワーゲンでいえば、ポロがライバルであり、日本車であればヴィッツやマーチに相当するクラスだ。

フォード・フィエスタ - Wikipedia

 

フォード・フォーカスはフォルクスワーゲン・ゴルフがライバルである。

フォード・フォーカス - Wikipedia

 

ヨーロッパ・フォードの車は評価も高くヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを何度も受賞しているし、世界ラリー選手権WRCでは長年トップコンテンダーの一角を占める。

そうでなければ、名車ブランドがひしめくイギリスでシェア1位になれるはずがない。

タミヤ 1/24 スポーツカーシリーズ No.217 フォード フォーカス WRC プラモデル 24217

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そんな良い車を持ってきているのに、フォードは売れず日本から撤退したのだ。

 

米国メーカーの小型車というと、クライスラーのネオンやトヨタが販売したGMのキャバリエ、サターンを思い出し、出来の悪い車というイメージが出来上がっている。

しかし、日本撤退まで売っていたフォードの小型車は決してそんな出来の悪い車ではなかったのだ。

 

大型車では日本の道には大き過ぎるから、小型化しろだって?

フィエスタはヴィッツと同じクラスなんだけど……

 

燃費、安全性、品質、何れもフォルクスワーゲンに比肩するものであって全く劣る物でもない。

 

結局BBCの記者のいう通りにドイツに学んだ小型車を、日本に投入しても失敗したわけである。

 

イギリスは現在自国資本の自動車メーカーを持っていない。最後に残ったMGローバーは2005年に倒産し、ランドローバーはインド・タタ社の傘下となった。

MGローバー - Wikipedia

早くから現地生産を始めてシェア1位、2位となったフォード、GMにひがんでか?あるいは自動車文化に無知な日本人を笑う為に、こんな動画を作ったのではないか?

 

ただ一つ、正しいことは*1

ドイツ車の方がアフターサービスが良い。

 

これだけは間違っていない。

ドイツ車のように全国にディーラーと整備工場のネットワークを築けなかった事が、むしろフォード撤退の原因だろう。

ドイツ車から学ぶとすれば、クルマ自体の出来ではなく、売り方である。

 

繰り返すが、日本では

単に車を小型化しても、米国車は売れない

のである。

*1:「ドイツ車が人気」はあらためていうまでもないだろう。